AIに記事や文章を書かせているのに、出てくるのはどれも「どこかで読んだような一般論」ばかり。もっと詳しく、もっと専門的に、と指示を厚くしても手応えがない――。そんなふうに感じたことはありませんか。実はわたしも、毎朝ブログのテーマを自動で用意する仕組みを回しながら、まったく同じ壁にぶつかっていました。この記事では、AIの記事作成がなぜ薄くなるのか、その正体は「書かせ方(プロンプト設計)」ではなく「渡す材料の粒度」にあった、という気づきをお話しします。
AIに書かせた記事が、どれも「それっぽいだけ」になる
まず、わたしがどんな状況だったかをお話しさせてください。このブログは、次に書くテーマをスプレッドシートで管理して、AIがそれを受け取って下書きを作る、というゆるやかな自動化で運営しています。仕組みそのものは動いていて、毎日ちゃんと下書きは出てきます。ところが、出てきた記事を読むたびにため息が出るのです。文章は整っている、誤字もない、それなのに中身がスカスカ。「副業には行動が大切です」「継続することが成功への近道です」――間違ってはいないけれど、誰の顔も浮かばない、教科書みたいな文章ばかりでした。
最初は、AIの性能のせいだと思っていました。もっと賢いモデルを使えば解決するのかな、と。あるいは自分のプロンプト、つまりAIへの指示文が下手なのだろう、と。だから指示文をどんどん長くしました。「具体例を入れて」「体験談を厚く」「専門用語を添えて」。指示のリストはどんどん膨らんでいきました。でも、記事の薄さはほとんど変わらなかったのです。ここで、ようやく「これは指示の問題じゃないかもしれない」と思い始めました。
薄さの正体は「書かせ方」ではなく「渡す材料」だった
結論から言うと、生成AIの記事の質の天井は、AIに渡す「材料」の粒度でほぼ決まってしまいます。ここで言う材料とは、記事を書き始める前にAIが手にしている情報のことです。わたしの場合は、テーマに添えた「キーワード」がそれにあたりました。
プロンプト設計というと、つい「どう書かせるか」という下流の指示ばかりを厚くしたくなります。でも、いくら調理法を細かく指定しても、まな板の上に置いた食材が乾いた乾物ひとつだけなら、豪華な料理にはなりません。逆に、良い食材が揃っていれば、多少ざっくりした指示でも料理は成立します。記事も同じで、上流の材料が貧しいまま下流の指示だけを盛っても、出てくるのはやっぱり薄い記事なのです。
この感覚は、以前わたしが書いたこどもが感想文を書くのが苦手な理由を掘り下げた回とも重なります。子どもが感想文を書けないのは能力が低いからではなく、書くための「材料」を持っていないから、という話でした。AIも人も、手元に材料がなければ、それらしい言葉を並べて埋めるしかありません。薄さの正体は、書き手の能力ではなく、材料不足だったわけです。
単語だけのキーワードを渡すと、AIは毎回ゼロから発想する
では、わたしが渡していた「材料」がどれくらい貧しかったのか。当時、テーマに添えていたキーワードは、たとえば「副業, クリエイティブ, 学生」のような、単語が2〜5個並んでいるだけのものでした。一見それっぽく見えますが、これだけを渡された側の身になってみると、なかなか酷な話です。
単語だけを受け取ったAIは、「副業」「クリエイティブ」「学生」という言葉から、毎回まっさらな状態で記事を発想し直すことになります。想定読者は誰なのか、その人が何につまずいているのか、書き手にどんな体験があるのか――そうした肝心な部分の手がかりがゼロなので、AIは無難で当たり障りのない、最大公約数的な内容を並べるしかありません。キーワードの粒度が粗いと、記事はどうしても一般論に着地してしまうのです。
これは、書かせるたびに毎回サイコロを振り直しているようなものでした。同じテーマでも、単語の並びから連想される内容は無数にあるので、出力は毎回ばらつくのに、どれもこれも似たり寄ったりに薄い。指示文をいくら磨いても、この「振り出しに戻る」構造そのものは変わらなかったのです。ブログをAIと一緒に回してみた経緯はブログ更新をまるごと自動化してみた回にも書きましたが、仕組みが動くことと、中身が良いことは、別の問題でした。
もう少し踏み込むと、単語だけのキーワードには「なぜ?」が一切含まれていないのが問題でした。「副業」という単語からは、副業をすすめる理由も、やめておいた方がいい理由も、両方が等しく連想できてしまいます。書き手であるわたしがどちらの立場なのか、どんな失敗や成功を経てそう思うようになったのか――そうした温度のある情報がまるごと抜け落ちているので、AIは安全側に倒して「どちらにも読める無難な話」を書くしかありません。結局、薄い記事というのは「立場のない記事」でもあったのだと思います。誰に向けて、どんな理由でそう言うのか。その芯の部分は、単語では絶対に伝わらないのです。
理想の粒度は、説明するより自分で1つ書いた方が早かった
材料が問題だと気づいてから、わたしは「もっと詳しいキーワードを用意しよう」と考えました。ところが、ここでまた詰まります。「詳しく」と一言で言っても、どれくらい詳しければ十分なのか、その基準を言葉で説明するのがとても難しいのです。「想定読者を書いて」「体験談を入れて」と指示を足しても、結局その一つひとつがまた曖昧で、受け取る側は解釈に困ってしまいます。
そこでわたしは、理想の粒度を言葉で説明するのをあきらめて、自分で「切り口サンプル」を1つだけ、まるまる書いてみることにしました。あるテーマについて、想定読者はこういう人で、世間の一般的なやり方にはこんな落とし穴があって、わたし自身はこんな経験をして、だから読者にはこう動いてほしくて、結論はこうで……という中身を、400字ほどの地の文でびっしり書いたのです。
実際に書いてみたサンプルはこんな調子でした。「想定読者は、クリエイティブ系の副業を始めたい大学生。でも実績がなくて、クラウドソーシングで何度応募しても案件が取れずに消耗している人。世間では『まず単価の安い案件から数をこなそう』と言われがちだけれど、そもそも応募が通らないのでスタートラインにすら立てない――」といった具合に、状況の細部まで文章で書いていきます。そこにわたし自身がインターン先で広報の提案をして仕事を任せてもらえた体験を絡め、最後に「安価でもいいからデザインを良くしたい個人事業主を狙うのがポイント」と結論まで書き切る。ここまで書いて、ようやく「記事の設計図」と呼べる材料になりました。
書いてみて、自分でもはっきりしました。このくらいの密度の材料を最初に渡してあれば、AIは「ゼロから発想」する必要がなくなり、渡された設計図を記事の形に膨らませるだけで済みます。抽象的に「詳しく書いて」と百回言うより、具体的な完成形を1つ見せる方が、圧倒的に伝わる。これは本業で子どもにものづくりを教えているときの感覚とも似ていました。「もっと工夫して」と言葉で促すより、良い作例をひとつ隣に置く方が、子どもはすっと理解してくれるのです。しかもその作例は、闇雲に「すごいね」と結果を褒めるのではなく、「ここでこう考えて手を動かしたのがいいね」と過程を具体的に指し示してあげると、次に活きます。良し悪しの基準は、説明されるより見せられた方が早く伝わるのだと、あらためて実感しました。
記事が薄くならない「6要素フォーマット」という指示書
自分で書いたサンプルを眺めていると、そこに必ず入っている要素が見えてきました。それを整理して、テーマを提案する時点で毎回この6つを埋める、というフォーマットにしました。指示書そのものを、材料を集める型として作り替えたわけです。
- 想定読者と、その人が今つまずいていること
- 世間の一般的なやり方と、その落とし穴(なぜうまくいかないのか)
- 書き手自身の実体験(何をして、相手がどう反応し、どうなったか)
- 読者が真似できる具体的な打ち手を2〜3段階で
- 記事の結論・おすすめする立場(言い切る)
- 記事の流れ(見出しの並びを一言ずつ)
ポイントは、これらを単語ではなく、400字ほどの文章で書くことです。単語だと解釈の幅が広すぎて、結局ゼロ発想に戻ってしまうからです。あわせて、指示書には「良い例」と「悪い例」の両方を載せるようにしました。悪い例というのは、まさに以前のわたしがやっていた「副業, クリエイティブ, 学生」のような単語の羅列です。良い例と悪い例を並べて見せることで、「これくらいの密度が要るんだな」という基準が一目で伝わります。理想の完成形を人が1つ書いて見せる、良い例と悪い例で密度の基準を示す、6要素を必ず埋める――この3つで、材料の粒度が安定するようになりました。
ちなみに、この仕組みはスプレッドシートとAIをつなぐ形で動いています。裏側の相性についてはclaudeとGASを組み合わせた回で触れているので、仕組みそのものに興味がある方はのぞいてみてください。
やってみて感じた、材料づくりの手間と見返り
正直に言うと、6要素を毎回400字書くのは、それなりに手間がかかります。単語を5個並べるのに比べたら、明らかに面倒です。でも、この面倒くささには理由があって、記事を書く前の「考える作業」を前倒ししているだけなんですよね。どのみち良い記事にするには誰かが考えなければいけない部分を、材料づくりの段階でまとめて済ませている、という感覚です。
見返りははっきりありました。材料を厚くしてからは、出てくる下書きが「わたしの体験に根ざした、具体的な誰かに向けた文章」に変わりました。少なくとも、教科書みたいな一般論の寄せ集めは激減しました。生成AIの品質を上げたいとき、多くの人はモデル選びやプロンプトの言い回しに目を向けますが、いちばん効いたのは、その手前の材料設計だったのです。手間は増えても、書き直しや「なんか薄いな」というがっかりが減るので、トータルではむしろ楽になった気がしています。
よくある質問
Q. プロンプトを工夫するのは意味がないのでしょうか?
A. 意味がないわけではありません。ただ、渡す材料が薄いままだと、プロンプトをどれだけ磨いても天井が低いまま、というのが実感です。まず材料の粒度を上げて、その上で仕上げの指示を整える、という順番が効率的だと思います。
Q. 6要素を400字も書くのは大変では?
A. たしかに手間はかかります。でもそれは、良い記事にするために誰かが必ず考える部分を、書く前にまとめて済ませているだけです。後工程の書き直しが減るので、慣れると全体の負担はむしろ軽くなります。
Q. AIに理想の粒度を言葉で説明すればいいのでは?
A. わたしも最初はそう考えましたが、「詳しく」の基準を言葉で伝えるのは想像以上に難しかったです。自分で完成形のサンプルを1つ書いて見せる方が、圧倒的に速く正確に伝わりました。
Q. これはブログ以外の文章にも使えますか?
A. 使えると思います。想定読者・落とし穴・実体験・打ち手・結論という材料の型は、メールでも資料でも共通です。単語ではなく文章で材料を渡す、という考え方はそのまま応用できます。
まとめ:出力が薄いと感じたら、材料の粒度を疑う
AIに書かせた記事が薄いとき、つい「書かせ方が悪いのかな」「モデルが賢くないのかな」と下流を疑ってしまいます。でもわたしの経験では、原因のほとんどは上流、つまりAIに渡している材料の粒度にありました。単語だけのキーワードを渡せば、AIは毎回ゼロから発想して一般論に着地します。逆に、想定読者・落とし穴・実体験・打ち手・結論・記事の流れという6要素を、文章として厚く渡してあげれば、出力はぐっと具体的になります。生成AIの品質に悩んでいる方は、書かせ方をいじる前に、一度「自分はどんな材料を渡しているか」を見直してみてください。指示書の設計を変えるだけで、記事の景色は変わります。
こんなふうに、非エンジニアのわたしがAIと一緒にブログ運営をあれこれ試した話は、これからも気ままに書いていきます。よかったらXやInstagramをのぞいて、ゆるっとフォローしてもらえたら嬉しいです。ぐーたらしながらも、こういう小さな改善を積み重ねていく様子を、一緒に眺めてもらえたらと思います。
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