こどもが感想文を書くのが苦手な理由は”未学習”

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夏休みや連休のたびに、あちこちのご家庭で繰り広げられる「感想文が書けない問題」。原稿用紙を前にしてフリーズしてしまうお子さんを見て、「うちの子、やる気がないのかな……」とため息をついてしまう親御さんは、きっと少なくないと思います。でも、こどもが感想文を書くのが苦手な理由は、やる気の問題ではありません。多くの場合、それは「未学習」——つまり、何を書けばいいのかをまだ習っていないだけなのです。

私はふだん、ITを使ったものづくり教室で子どもたちにプログラミングや3DCG、ロボット作りを教えています。そこで毎日のように、「書けない子」と向き合っています。今日はその現場から見えてきた、「書くのが苦手」の正体と、教室で実際にやっている練習の型をお話ししてみます。感想文だけでなく、お子さんの「振り返る力」全般を育てたい方の参考になればうれしいです。

「書くのが苦手」は、やる気がないわけではありません

まず大前提として、書けない子=何も考えていない子、ではありません。ここを取り違えると、声かけがぜんぶ空振りしてしまいます。

教室でも、何か書いて、と言われた瞬間に手が止まってしまうお子さんはたくさんいます。特に男の子に多い印象です。頭の中がからっぽだから書けないのかというと、まったくそんなことはありません。実際に話を聞いてみると、「あのブロックを動かすのが難しかった」「センサーが反応しなくて何回もやり直した」と、ちゃんと体験も感情も残っているのです。

つまり、材料はある。ただ、その材料を「文章という形にして取り出す」やり方を知らない。これが「書くのが苦手」の正体です。頭の中にある体験を、どう言葉にして、どういう順番で並べればいいのか。その手順が未学習なだけなのです。大人でも、初めて触るソフトの操作を「感覚でやって」と言われたら固まりますよね。それと同じことが、子どもの頭の中で起きています。

なぜ「1文で終わらせよう」としてしまうのか

書くのが苦手なお子さんには、共通する行動パターンがあります。それは、とにかく短く、1文で終わらせようとすることです。「たのしかったです。」「むずかしかったです。」——これで完成、という顔をされた経験、ありませんか。

これは手抜きではなく、防衛反応に近いものだと私は見ています。何を書けばいいか分からない状態で長い文章を求められると、子どもにとってそれは「終わりの見えない苦行」になります。だから、いちばん短くて無難な言葉でさっさと切り上げて、この状況から抜け出そうとするのです。

ここで「もっと書きなさい」「たった1行?」と迫ってしまうと、逆効果になりがちです。子どもの中では「書く=怒られる・責められる嫌な時間」という結びつきが強まってしまい、ますます筆が止まります。必要なのは量を求めることではなく、「何を書けばいいか」の地図を渡してあげることなのです。この順番を間違えないことが、遠回りに見えて一番の近道になります。

教室で毎回やっている「最後の10分の振り返り」

では、その「地図」をどうやって渡すのか。私が教室でずっと続けているのが、授業の最後の10分を必ず「今日やったことを振り返る時間」にする、という取り組みです。

ものづくり教室なので、子どもたちの目的はあくまで「作ること」です。ロボットを動かしたい、ゲームのキャラを走らせたい、その一心で来ています。だからこそ、放っておくと最後の振り返りはおざなりになります。「もう作り終わったし、早く帰りたい」というのが本音です。その気持ちは、痛いほど分かります。作るのが楽しくて来ているのに、最後に文章を書かされるのですから。

それでも私は、少し強引にでも、この振り返りを練習させます。なぜなら、振り返りこそが「書く力」の土台になるからです。ここで書くのは長い作文ではありません。今日つくった仕組み、学んだこと・発見したこと、難しかったこと。この3つを、それぞれ一言ずつでいいので言葉にしてもらう。たったこれだけです。でも、この「たったこれだけ」を毎回積み重ねることが、じわじわと効いてきます。

最初は「別に……」「ふつう」としか出てこなかった子が、何週間かすると「今日はモーターを2個つないだのが難しかった。でも配線の順番を変えたらできた」と、自分から具体的に話し出すようになります。この変化を何度も見てきたからこそ、私はこの10分を手放せません。

忘れられないお子さんがいます。入会したての頃、その子は振り返りシートの「難しかったこと」の欄をいつも空欄のまま出していました。「なかった」と言うのです。でも、その日はロボットが思うように曲がらなくて、何度もプログラムを直していたのを私は見ていました。そこで「さっき、ロボットが曲がらなくて3回くらい直してたよね。あれ、難しくなかった?」と聞いてみたら、はっとした顔で「あ、あれ難しかった」と。自分では「難しかった」と認識すらしていなかったのです。それから一緒に「どこを直したら曲がったんだっけ?」と振り返って、その子は初めて欄を埋めました。書けなかったのは、体験がなかったからではなく、自分の体験を「難しかったこと」として言葉にする視点を、まだ持っていなかっただけ。この一件は、私に「未学習」ということの意味を改めて教えてくれました。

おざなりになりがちな時間を、どう続けさせるか

とはいえ、始めたてのお子さんにいきなり「振り返って」と言っても、まず乗ってきません。目的が「作ること」であって「振り返ること」ではないからです。ここで無理に長く書かせようとすると、せっかくの楽しい時間の後味が悪くなってしまいます。

私が意識しているのは、振り返りを「テスト」ではなく「おしゃべりの延長」にすることです。「今日いちばん難しかったのどこだった?」と、まず口で聞く。子どもが答えたら、「それ、そのまま書いておこう」と、話した内容をそのまま文字にしてもらう。ゼロから書かせるのではなく、まず話してもらって、その話を書き写す、という順番にするだけで、ハードルはぐっと下がります。

大事なのは、完璧を求めないことです。最初は一言でいい。書けたら「お、ちゃんと難しかったところが分かってるね」と、書けた事実そのものを認める。この積み重ねで、子どもの中の「書く=嫌な時間」が、少しずつ「書く=自分の頑張りを残す時間」に置き換わっていきます。感想文が苦手なお子さんにこそ、この地道な入り口が効きます。

「作った仕組み・発見・難しかったこと」——書ける型を渡す

教室で使っているこの3つの型は、実は感想文にもそのまま応用できます。感想文が書けないのは、「思ったことを自由に書きなさい」という指示が、子どもにとってあまりに漠然としているからです。自由に、というのは、地図なしで「どこでも好きなところへ行っていいよ」と放り出されるようなもの。だから固まります。

そこで、型を渡してあげます。読書感想文なら、たとえばこんな3つです。

  • いちばん心に残った場面はどこか(=今日つくった仕組みにあたる、話の中心)
  • そこで何を感じた・気づいたか(=学んだこと・発見したこと)
  • 自分だったらどうするか、分からなかったところはどこか(=難しかったこと)

この3つを、それぞれ数行ずつ埋めていくだけで、原稿用紙はあっという間に埋まります。「自由に書く」のではなく「枠を埋める」に変えてあげる。これが、未学習の子に最初に渡すべき地図です。私の教室での振り返りが、そのまま家庭の感想文練習に横展開できるのは、根っこにあるのが同じ「体験を言葉にする手順」だからです。以前、日記の書き方について書いた回でも触れましたが、書く力は才能ではなく「型を知っているかどうか」で大きく変わります。

おうちですぐ試せる、3つの声かけ

では、実際に家庭で何をすればいいのか。特別な教材はいりません。今日から使える打ち手を3つに絞ってお伝えします。

1つ目は、書かせる前に「まず口で聞く」こと。原稿用紙を渡す前に、「どの場面がいちばん好きだった?」と会話で引き出します。子どもは、書くのは苦手でも、話すのは意外と得意なことが多いです。話したことを「今の、そのまま書いてみよ」と促すだけで、書き出しの一歩が踏み出せます。

2つ目は、「3つの箱」を紙に書いてあげること。心に残った場面/気づいたこと/難しかった・分からなかったこと。この3つの見出しだけ先に書いて、その下を埋めてもらう。枠があるだけで、子どもは驚くほど書けるようになります。

3つ目は、結果ではなく過程をほめること。「上手に書けたね」ではなく、「難しかったところに、ちゃんと気づけたね」と、取り組んだプロセスを具体的に認めます。ここは私が仕事でいちばん大切にしている考え方でもあります。生まれ持った才能や結果だけをほめるのではなく、やっている行動を細かく分解して、できていることを根気よく認める。そうすると、子どもは「次もやってみよう」と思えるのです。教室で子どもにものづくりを教えてきた経験から言っても、この過程をほめる声かけの効果は本当に大きいです。

もし「型を渡す」やり方をもっと体系的に知りたいという方は、書店や通販に読書感想文の書き方をまとめた本がたくさん出ています。私も指導のヒントを探すときに何冊か目を通しましたが、大人が読んでも「なるほど、こう分解すればいいのか」と発見があります。気になる方は読書感想文の書き方の本を楽天で探すのもおすすめです。

「書ける子」になるのは、才能ではなく経験の差です

ここまで読んでくださった方に、いちばんお伝えしたいことがあります。それは、感想文が書ける子と書けない子の差は、才能の差ではなく、「振り返る経験」を積んできたかどうかの差だ、ということです。

教室で振り返りを続けている子たちは、感想文のためにその練習をしているわけではありません。ただ毎回、今日やったことを言葉にしているだけです。でもその積み重ねが、いつのまにか「自分の体験を観察して、言葉にする」という力になっている。だから、いざ感想文の宿題が出ても、そこまで困らなくなるのです。

逆に言えば、書けないお子さんは、まだその経験が足りていないだけ。だとしたら、責める理由はどこにもありません。必要なのは叱咤ではなく、体験を言葉にする小さな練習を、日常の中に少しずつ混ぜてあげることです。夕飯のときに「今日いちばん面白かったことは?」と聞くだけでも、立派な振り返りの練習になります。そうやって普段から自分の一日と向き合わせることが、遠回りに見えていちばん確実な近道だと、私は現場で実感しています。

よくある質問

Q. うちの子は本当に「たのしかった」しか書きません。放っておいて大丈夫?

A. 放っておくより、「どこがたのしかった?」と一段だけ掘る声かけがおすすめです。書けないのはやる気ではなく「何を書くか」が未学習なだけなので、具体的な問いで材料を引き出してあげると、少しずつ書ける言葉が増えていきます。

Q. 男の子は特に書くのが苦手と聞きますが、本当ですか?

A. 現場の実感としては、短く1文で終わらせようとするお子さんに男の子は多い印象です。ただこれは能力の差ではなく、書き方が未学習なだけ。型を渡せば、しっかり書けるようになります。

Q. 家で感想文の練習をさせると、けんかになってしまいます。

A. いきなり「書きなさい」だと嫌な時間になりがちです。まず口で話してもらい、それを書き写す順番にすると、ハードルが下がってけんかになりにくいです。書けた事実そのものをほめてあげてください。

Q. 3つの型は、読書感想文以外にも使えますか?

A. 使えます。遠足や運動会の作文、自由研究のまとめなど、「体験を言葉にする」場面ならほぼ応用できます。中心の出来事・気づき・難しかったこと、の3点セットで考えると書きやすくなります。

まとめ

こどもが感想文を書くのが苦手なのは、やる気がないからでも、何も考えていないからでもありません。何を書けばいいかがまだ「未学習」なだけです。だからこそ、必要なのは叱ることではなく、書き方の地図——「中心の場面・気づき・難しかったこと」という型を渡してあげること。そして、まず口で話してもらい、書けたら過程をほめる。この小さな積み重ねが、いつのまにか「書ける子」を育てます。私が教室で最後の10分を手放さないのも、この地道な練習の効果を毎日目にしているからです。

この記事が、原稿用紙の前でため息をついているご家庭の、ほんの少しの助けになればうれしいです。komichi-log.comでは、ものづくり教室の現場で気づいたことや、ぐーたらながらも堅実に暮らすための小ネタを、のんびり更新しています。よかったらX(旧Twitter)やInstagramのフォロー、そして書くことにまつわる過去の記事ものぞいてみてください。あなたのお子さんの「書けた!」を、こっそり応援しています。

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